手の届かない鳥がいる。
美しくもなければ、綺麗な声で鳴きもしない、どこにでもいる鳥がわたしは大好きだった。
どうしても飼い殺しにしたいのに、どうしても手が届かない。
ただただ永いこと、自由に飛び回る醜いその鳥に執着していた。
鳥がキズモノになってしまった。
飼い殺しにしたいのに、わたしがわたしの檻であの鳥をバラバラにしたかったのに。
ぜんぶの感情をわたしが教えたかったのに。
その鳥はもう感情を知ってしまった。
一度飼われた鳥はもう、野生には戻れない。
飼い殺しにしたいと言いながら自由に飛び回る鳥を捕まえることを、傷つけることをいちばん恐れていたのはわたしだったのかもしれない。
だったら?
「俺がせかいを変えてやる」
いちばんになれないのなら、トラウマになろう。
生涯消えない癒せない、今際の際にわたしの顔がちらついてしまうような。
傷を負って、でも不器用に再び飛び回りだした鳥の姿を見て、もう恐れない、いつかその羽根をもいで、飛べない鳥に興味はないのと気紛れな赤の女王の様に振る舞おう。
汚れ切った泥水の中で、わたしは彼を冷めたような、けれどきっと燃える瞳で見ていた。
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