彼は痛い痛いと人目も憚らず悲鳴を上げた。

昨日怪我したばかりだ、という傷口をわたしが抓り上げたからだ。

 

「どうしてそういうことをするの?」「されて嫌な気持ちになることはしてはいけない」

 

そう真面目に諭す彼を見て、わたしはマスクの中でニタリ、と笑った。

だって痛いことが嫌いな君が、そうやって痛がるところが見たかったから。

そんな無粋なことは言わずにあっそ、とテキトーな返事をした。