2022-07-02 傷 今ではないどこか 彼は痛い痛いと人目も憚らず悲鳴を上げた。 昨日怪我したばかりだ、という傷口をわたしが抓り上げたからだ。 「どうしてそういうことをするの?」「されて嫌な気持ちになることはしてはいけない」 そう真面目に諭す彼を見て、わたしはマスクの中でニタリ、と笑った。 だって痛いことが嫌いな君が、そうやって痛がるところが見たかったから。 そんな無粋なことは言わずにあっそ、とテキトーな返事をした。